釜山の草梁洞(초량동)にある日本の総領事館は、メインストリートの中央大路(중앙대로)の沿道に建っています。
その敷地の前に、韓国の一部のひとたちの意思と行政サイドの実質的な追認により、少女の坐像が4年前・’16年の暮れから設置されたままの状態です。
像に賛同しているひとたちなのか、最初の十数行は集団の名前が、それらの下に(91行×56列プラス最後の行なので)約5,100人ぶんの個人の名前が――最後の行には漢字で日本の姓名らしきものもあります――記された、銘碑もあります。
前者には法人格を有しない任意の団体もあるでしょうし、後者は(姓の種類が少ないため、必然的に)同姓同名がいくつも連続している箇所も散見されます。
(私の名前があるかどうか、探してもみましたがありませんでした。)
(同国内のテレビを視聴していてこの像を目にしたことは私は一度もないのですが、因果は不明ながら)日本のメディアのほうが本像の件を積極的に話題にし、ここ数年で敷地の周辺ががやがやとした感じに変化しているように見受けられます。
ゆえに、その存在が気になるかたもいらっしゃるでしょう。
首都・ソウルの日本大使館と比較して、バスに乗っていれば無理なく(自然に)一瞥できるロケーションではありますが、残念ながら現在、COVID-19による渡航制限のせいでなかなか現地の最新の様子を容易に確認しにくいのが実情です。
そこで、今回のエントリでは、Google マップのストリートビューや現地の地図サイトのそれに相当する代物――Naver MapのコリビューとKakaoMapのロードビュー――でチェックできる最古のものから最新のものまでの、現地の沿道の変遷をまとめて観察したいと思います。
- ’08年10月
現時点にてウェブ上で閲覧できる最古の、ストリートビューの類です。
このときはまだ、正門の前にブース(後述)の設置はなく、警察官がふたり立っているだけです。
- ’10年1月
警察の影のない領事館前です。
大阪のミナミにあった在日韓国総領事館の前を横切ると、昼間であれ真夜中であれいつも最低でも2名の(常識的に考えて、大阪府警の)警官が立ち、警察の車両も御堂筋の側道に停められていましたから、建物の前にまったくいないのは奇妙というか、感覚が(過去のことながら)理解できません。
- ’10年5月
敷地の中央大路に面した東側には、この日も警察官の姿が見えません。
正確に記すと近所にまったく配備されていないわけではなく、100メートルばかり南南西に建つ鄭撥像の右手や後方に定位置があり、そこを見てみるとだいたい、最低でも1台は一般的な観光バス様の警察の大きな車両が停まっています。――本エントリの一番下に載せた写真がそれです。
- ’12年10月
2年と数か月のあいだに直下を走る地下鉄の1号線・草梁駅(초량역)の改札階へ降りられるエレベータが設置され、それにあわせて街路樹や植込みが撤去されました。
この取除きが数年後、あの像の設置に利用されてしまいます。
ほか、正門の右構えの脇に銀色のブースも置かれ、警察官がそのなかにひとりいます。
- ’13年2月
4か月ほどのあいだに正門附近のブースに韓国警察のマークが印刷された、ステッカーかなにかが貼られました。警察官は、そのブースにひとりいるのみです。
いずれも、ロードビューを左・南側へ移動させると確認できます。
- ’14年1月
横断幕どころか門の前にバリケードの用意もまだない時分ですが、特別な日だったわけか、この日は正門前に盾を持った7人、中央大路の沿道北側にも2人、となんとも物物しい感じがする警察官の数です。
- ’14年5月
https://map.naver.com/v5/?c=14364876.4137043,4180368.5464733,17,0,0,0,dha&p=Z5pUDKmUHy50YxjQg_RNOg,-70.97,8.31,61.19,Float
https://map.kakao.com/?panoid=1114527238&pan=272.1&tilt=-10.9&zoom=0&urlLevel=3&urlX=965537&urlY=456060
歩道に自動車を無遠慮に停める行為はこの国においてはありふれた光景ですが、(政治的な意図の有無に関係なく)外国の領事館の前にてこれが可能というのはなかなか寛容だな、と思います。
それはそうとこの、’14年5月のNaver Mapの情報とKakaoMapの情報とを比較すると、車や歩行者が完全に一致するのがわかります。両社がそれぞれ自前で用意したわけではなくどこかから撮ったデータを買って各自の地図サイトに掲載しているらしい、との推論が可能になります。
- ’16年1月
像の設置もまだありませんが、駅のガラス張りのエレベータよりも北側に政治的な横断幕が掲げられています。
リンク先のロードビューを右へ移動させると確認できます。
敷地の前の道路がスカイブルー色に塗られましたが、これは交通ルールを守りましょうという趣旨により釜山の警察が(全国的な方策ではなく)市内の複数の地点に施したもののようです。
- ’16年2月
正門の前にてプラカードを携えた人物が座っています。
そしてこの年・’16年の12月の終わりに、例の像が設置されます。
- ’17年1月
金属製の少女像が設置された翌月の様子です。鎮座したての像の前に、多数の人影も確認できます。
- ’17年4月
像に関係する横断幕はありません。
(北側にある幕は、この年の翌月・5月に行われた大統領選挙に無所属で立候補した人物を宣伝するものです。)
- ’17年11月
およそ半年のあいだに、石碑の裏面・車道側に刻字が追加されました。
そのほか、横断幕がエレベータの北側に1枚だけ確認できます。
- ’18年1月
2か月ばかり前は1枚のみだった横断幕がこの日は一気に増えており、わちゃわちゃとしています。
在日同胞の人権を考慮しろ、は(脈略はともかく)理解できるとして、日米韓の同盟強化、”イエスは,日本を愛しておられ”ともなるともう、まったく本意がわかりません。
また、この日は警察官が門の前に不在です。
- ’18年1月
この日は警察官がひとりだけいます。
Googleのストリートビューと同月の撮影ですが、Naver Mapのコリビューのように一致はしません。ストリートビューはGoogleが地元の2社とは無関係に用意しているものらしい、とわかります。
- ’18年2月
国内の北東部・平昌にて冬のスポーツの祭典が開催されていた月です。街路灯の柱には太極旗と、五つの輪とエンブレムが印刷されたフラッグが掲揚されています。
- ’18年8月
寒い季節には毛布や、毛糸のマフラーや帽子をまとっている少女像ですが、夏は夏でシェード用の帽子を頭に乗せるんですね。
謝れ、という内容が横断幕から読めるのですが、相手国の建物に背を向けて、しかもハングルで記されているため、国内の支持者を増やしたい意図が主体なのだろうと推察します。
- ’19年10月
この3か月ほど前の7月に、数人の学生らが敷地内に侵入する事件が起こりました。それを受けてのことでしょう、正門前のバリケードがより強力なものに置きかわっています。
警察官も、沿道の南側と北側とにふたりずつです。
そして、現地の緊張感ゆえか――さすがにその雰囲気までは2次元のデータからは伝わってきません――、それとも偶然なのか、この日は横断幕がありません。
- ’19年11月
現時点におけるストリートビューの類は、これが最新です。
近隣の島国の(当時の)トップの否定と、”親日売国”というワードとが街路灯の幕に上下に並列されており、論点の整理ができていない印象を受けます。
以上の叙述のなかには一部、リンク先のページにて画像を動かさなければわからない説明も入れました。必要に応じて適宜、リンク先も参照してみてください。
ただし、KakaoMapのロードビューでは過去のデータに個別のURLが振られていません。リンク先は最新のロードビューが表示されるページですので、過去のものは手動によりチョイスしていただければ、と思います。
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