2022年4月1日以降の管内の在来線の特急料金を見直す、とJR九州が数日前・8月3日に発表しました。
なんとも聞こえのいい表現ですが、早い話が値上げです。
来年の3月31日までとその翌日以降とで、JR九州の在来線の自由席特急料金は以下のように変わります。↓
営業キロ | 2022年3月31日まで | 2022年4月1日以降 |
---|---|---|
25キロまで | 310円 | 500円 |
50キロまで | 630円 | 750円 |
75キロまで | 840円 | 1,000円 |
100キロまで | 950円 | 1,200円 |
150キロまで | 1,250円 | 1,800円 |
200キロまで | 1,410円 | 2,200円 |
300キロまで | 1,520円 | 2,400円 |
301キロ以上 | 1,680円 | 2,600円 |
25キロまでの自由席が500円、と現行の310円より61%も高くなるという大幅な増額が個人的に痛いです(ので後述します)。
もっとも、この変更後の自由席特急料金の体系を本州の旅客3社(JR東日本、JR東海、JR西日本)のA特急料金と比較すると、同額かほぼ同額、またはやや低くなるよう抑えられていることがわかります。↓
営業キロ | JR東日本、JR東海、JR西日本 | 2022年4月1日以降のJR九州 |
---|---|---|
25キロまで | 760円 | 500円 |
50キロまで | 750円 | |
75キロまで | 1,200円 | 1,000円 |
100キロまで | 1,200円 | |
150キロまで | 1,860円 | 1,800円 |
200キロまで | 2,200円 | 2,200円 |
300キロまで | 2,420円 | 2,400円 |
400キロまで | 2,640円 | 2,600円 |
600キロまで | 2,960円 | |
601キロ以上 | 3,300円 |
本州3社にはない、25キロまで、51キロ以上75キロまで、のふたつの区分をJR九州は残しました。
1987年の国鉄分割直後は全国の旅客6社で運賃や料金の体系が統一されていたわけですが、そのふたつの設定を廃止すれば3社とはたった数十円しか差はなくなりますから、この機会に本州の3社と同一にもできたと私は思うのです(。しかし、JR九州はそうしませんでした)。
“JR九州の在来線の特急料金が値上げにより本州とほぼ同等の水準に戻る”――これが本件の正しい解釈です。
ただ、九州のブロック紙と県紙、全国紙、通信社の記事をウェブ上の検索機能でざっと見てみたところ、同水準になることをちゃんと指摘できているのは共同通信社の下掲の報道ぐらいです。↓
JR九州、特急自由席を4割上げ 消費税除き初、コロナで業績悪化 | 共同通信
https://nordot.app/795213278140317696
1987年の分割化後にJR九州が特急料金を値下げしている過去を無視して、”値上げは会社の発足以来初”、などと各紙が本件を報じるのはプロでありながら悪質ですし、2011年に山陽新幹線との乗継割引の制度を廃止したのはどう考えても実質的な値上げにほかならないわけですから、値上げは初であるといった表現には軽薄さや空虚さしか私は感じません。
なお、1996年にやめた繁忙期の設定が復活します。
3月21日~4月5日、4月28日~5月6日、7月21日~8月31日、12月25日~1月10日、と期間は他社と一緒です。
(ただし、閑散期の設定のほうは復活しません。)
さて、最後に余談ながら私が気になる、25キロまでの自由席利用が310円から500円になる件です。
310円から400円にではなく、500円にしようと決めたのは、短区間の利用を減らしたいJR九州の意図によるものではなかろうかと私は考えます。
速達タイプではない特急列車で、自由席車内の検札が終わらぬうちに多数の客が降りていく様子を見ていて感じますが、乗務員(車掌)の負担を軽くするためや公平性の観点からも、停車ごとに乗客が増えたり減ったりするのを可能なかぎり抑えたく思うのは自然なことです。
それはそれで、理解はできるものの。
私自身はこの、25キロまでの区間を特急列車の自由席にちょい乗りする移動を愛好しているひとりなのです。
特急列車を利用した熊本空港とのアクセスについて過去にエントリを投稿しました(→参照)が、それこそまさにこの短距離乗車です。
ほかには、長崎本線の上り・佐賀から鳥栖まで、もしくはその逆(下り)で活用しています。
鳥栖以北の鹿児島本線と比較して鳥栖以西の長崎本線は普通列車の本数が少なく編成も短いうえ、時間帯によっては混雑で座れないためです。
2014年の春に小倉以西の、2018年の春には佐賀以東の、博多へ向かう特急列車の指定席開放がなくなったこともそうですが、地域内の輸送を担う普通列車の不便さを補完するための特急列車の利用が、少しずつしづらくなっているように感じます。
駅の少ない新幹線にはない、乗客をこまめに拾える利点こそ在来線の強みだと思うのですがね。
来春以降、九州にて私がJRの特急列車に乗る回数は従前よりも確実に減るでしょう。
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